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いつの間にか戦いになっている件。
信じられるのは、自分だけ…!!
私は追い詰められていた。
この程度なら通れるだろうと思っていた隙間は、頑なに私を受け入れてくれない。
浴室の窓も、たるみきっている私を受け入れてくれないだろう。
コストコに通い始めてから大容量のお菓子の美味しさに取り付かれながら、かつ痩せる努力もしなかった事は認めざるをえない。
だが、このような形で認める事になるとは思っていなかった。子供の無邪気な行為は時として残酷な事実を突きつけてくるのだと、思い知った。
このまま夫を待つしかないのか。
夫が帰宅した時、脱衣所の少し開いた隙間から半身を覗かせる私にどう反応するだろうか。
「インコ、この隙間…通れなかったの?」という問いに何と答えれば良いのだろうか。
どう答えても苦笑いするである愛する夫の目の奥に込められた嘲笑に、耐えられる気がしない。
絶対に嫌だ。私にだって妻としてのプライドが1ミクロンある。
何とかしなければ。
幼い息子の後姿を前に、「誰かに頼る」という行為がいかに脆く儚い事かを思い知った今、その嘲笑から逃れるには、私が動くしかないのだ。
私は全力で足を振り上げる。震える両足、引っかかる胸とお腹。残酷にもクローゼットと足の間には数センチの隔たりがある。
角度を変えてみても、力を入れてみても、足はむなしく空を切った。
絶望の香りは、どんどんとその濃度を増していく。
挑戦しては休み、を繰り返す内に息子はいつの間にか外に出ている。酷い。
だけどもう、私は誰かを頼る事はしない。
「今日脱衣所に閉じ込められたけどー、ちょっと本気出して自力で出てやったわ。」
愛する夫にカッコ良くそう言う為に、私は今、恥じらいというものを、捨てる…!
~こんな人も生きてます。 「とある妻の告白」より一文抜粋~
【※はてなブログチャレンジの為、小説調でお送りしました】